バーンスタイン ウィーンフィルのマーラー6番

若い頃に好きだったものに接して当時と変わらぬ思いが沸き起こるのを確認すると、毎日慌ただしくしていても、自分が昔の自分から変わっていないことが確認できてホッとする。

 

その一つが80年代のバーンスタインウィーンフィルマーラー6番のライブ録音。曲自体は本来そうしたノスタルジーを許さない、もう少し残酷で苛烈なものを含んでいるように思うが、晩年のバーンスタインの演奏では、そういうものも全て通り過ぎて、すべてが思い出であるかのように温かい手触りのものになっているように感じる。

 

第三楽章(アンダンテ・モデラート)の大詰め(練習番号102あたり)で、地平線のかなたを展望するようなヴァイオリンの旋律が長短微妙な転調を繰り返しながら下降してくる中で、いつの間にか8本のホルンの和音が体の奥から温かいものが湧き上がってくるようにクレッシェンドしてくる場面は、どんな演奏でも胸が熱くなる名場面だが、ウィーン・フィルのmellowな弦とウィーンのホルンセクションのアルペンホルンのような独特な響きで聴くとやはり格別である。

 

残念なことに、最新の研究の成果と称して、新たなマーラーの全集(楽譜)では、この素晴らしい第三楽章と第二楽章のスケルツォの順序を引っ繰り返して配置しており、最近ではそのような順序で演奏することもままあるようだが、まったく余計なことをしてくれるとしみじみ思います。この暖かく、懐かしいアンダンテ・モデラートの後に、様々な怪物の現れるゴヤの奇怪な版画絵のようなスケルツォを演奏して一体どうするというのか。

 

そういう順番となっている演奏は聴く前からお断りで、自分は死ぬまで、中高時代に出会った、この80年代の録音があれば十分です。

 

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