ドイツの巨匠ヨッフムが晩年の80年代にアムステルダム・コンセルトヘボーとともに来日したときのブルックナーの第七番の公演。大河のように滔々と流れる名演。当時高校生だったが、FM放送を聴いて圧倒されたのを覚えている(今も手元に録音テープがある)。
ヨッフムについては、政治学者丸山真男が「中年までは凡庸としか言いようのなかった人物も、誰かが見ていてポストとチャンスを与え続け、70歳を過ぎて後光が差すようなすばらしい音楽家に育てあげるヨーロッパの懐の深さ」というようなことを言っていたらしい。
これはさすがに巨匠に失礼に過ぎるとは思うが、2度の交響曲全集の演奏に比べても最晩年のこの演奏の方が断然素晴らしいことだけは確かと思う。人にはいろいろなタイプがあって、若い頃から才気煥発な人もいるが、最後にグンと伸びる人もいるので、うかつに判断してはいけないと改めて思う。
この演奏、冒頭の主題の後のホルンの合奏が、どうもHaas版にもNowak版にもない華やかなフレーズを吹いているような気がする(改訂版使用?)。ドイツ・ブルックナー協会総裁だったヨッフム氏が、そういう楽譜を使うのも、おおらかなこの方らしくて、また良し。