フルトヴェングラー・ローマ放送響「ジークフリート」(1953年)

 

今年2周目の「ニーベルングの指環」(フルトヴェングラー・ローマ放送響)の続き。「ワルキューレ」と経て「ジークフリート」の第二幕の終わりまで来た。

ジークフリート」は、通常「ワルキューレ」に比べると少し人気が落ちると思うが、どうして、若さと楽天に満ちた音楽の魅力的なこと。タッタ~タラ、タタタ、タタタという角笛の三拍子の長調のリズムに乗って、無垢で無知な若者が、欲望で呪縛された大人たち(小人のミーメ、龍になった巨人、主神ヴォータン)を次々と打ち破っていく様は痛快。

ご存じない方に分かってもらうには、大リーグでの大谷選手の快進撃を想像して欲しいと言えば、分かりやすいかもしれない。

ただ、この録音での「ワルキューレ」「ジークフリート」で耳に残るのは、ブリュンヒルデを歌うマルタ・メーデルと、小人ミーメを歌うユリウス・パツァークだろう。

メーデルはまだ40歳になったばかりで、若々しい声。神々しいフラグスタートに比べると、ずっと肉感的で、人間の「女性」が歌っているという感じがする。クンドリーが得意だったというだけあり、少しエロティックな感じすらあるように思う。

パツァークは独特のニヒルな感じ。お蔭で、ミーメも、小ずるくて醜悪な小人というよりは、かなりインテリで知能犯風の、でもどこかアンニュイな人物を感じさせる。何となく聞き覚えのある声と思ったら、あの有名なフェリアーとブルーノ・ワルターの1952年のマーラーの「大地の歌」で歌っていたテノールだった。

http://www.bruceduffie.com/modl.html

http://historyofthetenor.com/page.php?113