ギュンター・ヴァント N響

N響ザ・レジェンドでやっていた1979年のヴァントのN響公演。以前から聴いたことのあるブルックナーに加えて、ベートーヴェンのレオノーレ3番をやっていたが、これが凄かった。

冒頭の一音から凄く衝撃的な音がするが、放送で紹介されたエピソードによれば、リハーサルでは、N響は、この冒頭の一音を出すや否や停められて、各パートそれぞれたくさんのお小言をくらって、徹底的に鍛え直されたという。

Sauberkeit(清潔さ)への信仰というか、ドイツ人というのは異様に几帳面で潔癖なところがあって、ステンレスのキッチンを鏡のようにピカピカに磨き上げたり、シーツを熱いお湯で煮立てるように洗濯して真っ白にしたり、魚料理のレストランに行くとカップルでも殆ど無言で骨を取るのに熱中して文字通り骨しか残さず綺麗に食べたり、一度「清潔さ」がテーマになると、徹底的にこだわるところがあると思う。

それと同じ精神に基づいているというと茶化しているみたいだが、おそらくメンバーは学生時代から散々やっているであろうこの曲を、ヴァントを指揮台に呼んでしまったがために、みんなガチガチに緊張して必死で「清潔に」演奏している様が、40年近く前の録音でもヒシヒシと伝わってくるのが凄い。

N響には来なかったが、カール・ベームもこのスタイルの巨匠だったのだろうと思う。

でも、普通の職場でもこういう上司の方、時々いますよね。(もちろん、ヴァントと同様、素晴らしい成果を上げていることが多いと思いますが(汗))。

https://www2.nhk.or.jp/archives/chronicle/pg/page010-01-01.cgi?hensCode=000046950112901000193