ヘルダーリン ヒュペーリオン

ヘルダーリンは、19世紀後半のドイツ語圏の文化や思想に触れていると、山登りをしていて途中現れる沢の流れのように、時々見かける名前である。

日本では近年はあまり関心が寄せられていないのか、主著ヒュペーリオンも、一番手に入りやすいのは初版1936年の古い訳の岩波文庫版。

そのせいもあって決して読み易くはないが、自らのこの世での使命を求め、よりよい生き方を目指すことの尊さと危うさを描く高い調子は、今日の小説では日独を問わずあまり見られない、まさにロマン派の時代の作品と思う。

筋書きその他に何ら共通するものはないが、どことなくニーチェツァラトゥストラと似た空気を感じたが、実際、ニーチェの愛読書だったらしい。

もう一つの驚きの出会いは、作品後半にさり気なく出てくる「運命の歌」の詩。これは、大学で属していた合唱団の最初の演奏会で歌ったブラームスの曲の歌詞。今でもそらで言えるくらい良く覚えているが、もともとここにあったとは知らず、驚き。

考えてみれば、この作品の主人公の真摯で不器用な生き方はブラームスのそれと似ているし、書簡体という小説形式もクララ・シューマンとの美しい手紙のやり取りを思い出させる。

 

 

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