ワルター・ウィーンフィル 1948-1956 ライブ

日経の日曜版「名作コンシェルジェ」に、1950年代のウィーンフィルとの名盤が登場(モーツァルトの40番とレクイエム、マーラーの復活)

特にモーツァルトの40番は、冒頭の有名なメロディ(ミレレー、ミレレー、ミレレーシー)の最後の「レーシー」の部分で、ヴァイオリンにポルタメント(日経記事の表現では「にゅるり」)がかかっているのが特徴。

このポルタメントで、中高時代の安物オーディオでも聴き取れる、ウィーンフィル独自の音というものを初めて識った。

今のウィーンに行っても決して見つからない音。ステファン・ツヴァイク風に言えば「昨日の世界」の音ではあるが。

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しかし、つまらない回顧趣味と言うなかれ。

これらの演奏が記録されたのは、第二次大戦が終わって間がない頃(マーラーは1948年。わずか3年後!)。ウィーンの国立歌劇場もまだ瓦礫で、多くの人が食うにも困っていた時代。

それ以上に、ウィーンが、ワルターを初めとする同僚音楽家を、ユダヤの血筋だけを理由に石をもって追った悪夢の時代が終わって僅か数年で、こんな演奏会を開いているというレジリエンスに思いをすれば、ポストコロナへの戦いに向けて勇気が湧く。