ジュリーニ・ウィーンフィル ブルックナー交響曲第8番(ライブ)

ジュリーニウィーンフィルブルックナー八番は、スタジオ録音されたCDが歴史的名盤として有名だが、その少し前のライブ録音はさらに凄い。
特にフィナーレの大詰め、Youtubeでいうと1:30:15過ぎ。「ラ、ファ―」というファンファーレをフォルテッシモで3回繰り返す部分だが、あのウィーンフィルが腹の底から絶叫しているような、とてつもない音を出している。
しばらく前に発見してから何度か聴いているが、そのたびに、ツァラトストラが預言者の嘆きを「否!否!三たび否!」と打ち消し、生を肯定する場面を思い出す。
同じ生の肯定でも、揺るぎないカトリックブルックナーと、ニヒリズムを経てきたニーチェとでは全く次元が違うが、闇の底から現れた巨大な光のような力を持つ「音」「言葉」の数々。19世紀末のドイツ語圏文化の達した異常なエネルギーの一例。
ジュリーニの全盛期の指揮姿は、長い腕の先から炎が出ているようだったとどこかで聞いた。この部分ではそれを彷彿とさせる。自分が90年代半ばに彼を生で聴いたときは、そうしたエネルギーは残念ながら全く感じることはなかったが。