バーンスタイン・コンセルトへボウ マーラー第四

バーンスタインの晩年のマーラー交響曲4番の録音を久しぶりに聴いた。世間では60年代にニューヨークフィルと入れた録音の方が評判が高く、晩年の全集の中ではこの録音はなぜか影が薄いが、改めて聴いて、ありとあらゆる表現をやり尽していて見事という他ない。

この録音では、終楽章の声楽ソロに、通常なら成人女性のソプラノが歌うところに、ボーイソプラノを起用している。

テルツ少年合唱団員のヘルムート・ヴィテックという人だが、巨匠のマーラー全集録音に起用されるだけあり、さすがに安定感ある歌いぶり。

それは声楽の技術だけでなく、雀のような少年の華奢な躰(レーゲンスブルクの少年合唱団はDomspatzen(大聖堂の雀たち)と呼ばれているくらい)からの、今にも壊れてしまいそうな、いじらしい響きではなく、音域こそ高いが、おそらくは母親の背丈を超えかけたであろう、骨格もしっかりとしてきた躯体を感じる声である。

しかし、それが、かえって声変わりで失われる直前の儚さも感じさせる。これだけ見事に歌えていたのが、ある日を境に二度と同じように歌えなくなるのはどういう気分なのか。羽をもがれた天使のようで痛々しさを感じる。

このヴィテックという人、この録音の他に、アーノンクール指揮のバッハのカンタータ等にも登場するが、その後の声楽家としての活動は聞かない。

今回、グーグルで検索して初めて知ったことだが、今は南ドイツの録音技術関係の会社の共同CEOを務めているとのこと。私より2つ年下の同世代。健在なようで何より。

最初の写真はもっと幼いときと思われる。二番めの写真でバーンスタインの向かって右側の少年がWittekとのことだが、背丈は既にバーンスタインとあまり変わらないので、おそらくこのマーラーを入れた頃ではないか。