シノーポリ・ドレスデンのマーラー9番

シノーポリマーラー9番。彼にとっては2番目のドレスデンのStaatsKaplleとの録音。発売された2007年頃に渋谷のタワーレコードで視聴したときに、一聴して悪くないと思いつつ何故か買わなかったまま気になっていたが、改めてこうして聴いてみるとやはりユニークな秀演。現代のこの曲の演奏として、贅肉を削ぎ落として、磨きぬいたアバドベルリンフィルの演奏が一つの極にあるとすれば、曲に含まれている豊饒な音たちをそのまま抱きとめたこの演奏がもう一つの極にあると思う。絵画に譬えれば、絢爛豪華でエロチックだけど、どこまでも不吉なクリムトのような印象。フィルハーモニアとの全集の9番の録音が、何故か5番や2番のものと違って精細に欠けるものだっただけに、この再録音が残されていて良かったのではないか。シノーポリは指揮者としては若死にしたが、もし長生きしていたら、この録音の先で、一体どのようなマーラーを聴かせてくれたのだろうか。
https://www.youtube.com/watch?v=4AQOk2U_xzk