大きいことは良いことだ?!

数日前に会った米国人の知り合いから、「お前も含む日本人の中高齢の男性は、なぜマーラーやらブルックナー  、ワーグナーやら、ドイツ後期浪漫派の大編成の音楽が好きなのか」と聞かれ、答えに窮した。「明治以来、ドイツの影響が強かったからかな」などと口走ったが、これはもちろん答えになってなくて、ドイツ語圏にもバッハ、ハイドンモーツァルトもいるし、浪漫派だってシューベルトやヴォルフもいる。

 

ちなみに彼女は、広義の金融業界の人だが、ジュリアードでピアノを勉強していたくらいで音楽には詳しいが、一番好きなのはバロックオペラで、20世紀の音楽でもマーラー交響曲よりもストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲などの方がよほど良いという。

 

答えをここ数日考えていたが、自分についていうと、やはり人格形成期だった80年代から90年代前半の日本の空気が、バブルというか、より大きな世界を目指せという雰囲気に満ち満ちていたからではないかと思う。

 

マーラーワーグナーブルックナー、それぞれ全く異なる個性の芸術家だが、いずれも小さな小市民的な幸福でない、大きな、壮大な世界を描いた人達だった。

 

もちろん自分も、特に最近はシューベルトの描く、普通の若者の打ち震える心を歌った小さな歌曲や、ラジオ体操の朝のように爽やかなヘンデルのバイオリンソナタにも心惹かれることが増えているが、やはり本当に自分を鼓舞してくれる音楽、大変でも楽譜を読み込んで演奏に参加したいと思う音楽は、結局はさっきの3人やベートーヴェンの音楽なのである。