2020-01-01から1年間の記事一覧

晩年のモーツァルトの音楽

晩年のモーツァルトの音楽で恐ろしいと思うのは、ごく日常的な風景から一瞬で異次元の空間に連れて行かれるような感じがするところ。 この弦楽三重奏(KV563)もその典型。ハイドンのようなといってはハイドンに失礼かもしれないが、ごくありふれた古典音楽と…

庄司紗矢香・オラフソン リサイタル(2020年12月13日)

6年ぶりに庄司紗矢香のヴァイオリンリサイタル、行きました。 日本到着後の検疫期間を経てのリサイタルだったそうですが、プログラムには本人が簡潔ながら作品への思いと静かな自信に満ちたメッセージ。 これまではメータやテミルカーノフ、プレスラーと言…

チェリビダッケ・ミュンヘンフィル ベートーヴェン交響曲第三番(1996年)

留学時代に聴いた懐かしのコンサートの音源を発見。 1996年の恐らく2月か3月だったと思うが、チェリビダッケ・ミュンヘンフィルのベートーヴェン・エロイカ。同じ演目で2~3回演奏会があったと思うが、この年の夏に亡くなるチェリビダッケの最後のシリーズだ…

トランプ大統領とオックス男爵(薔薇の騎士)

トランプ大統領の一貫して野卑で女性蔑視的な態度については、ここ数年ずっと既視感があったのだが、「薔薇の騎士」のオックス男爵だった! ウィーン文化の髄とも言えるホーフマンスタールの台本によるだけに、あの態度というのは、残念ながら、当時のウィー…

熊倉優指揮、藤田真央ピアノ N響演奏会(2020年11月14日)

コロナで暗いニュースが多い。クラシックの演奏会も、在外の指揮者・ソリストが来日できず中止・変更に追い込まれているものが多い。 ただ、よく見ると、そうした変更となった演奏会で、コバケン等の大御所に加えて、日本人の若手演奏家に活躍の機会が増えて…

クライバー・ウィーンフィル ベートーヴェン5番(1982年ライブ映像)

クライバーとウィーンフィルのベートーヴェン第5の映像。第4、第7は色々な映像があるが、5番は初めて。 メキシコの放送局の映像。画像が古いのと演奏中にアナウンスが入るのが難だが貴重。1982年、クライバーもまだ若くて元気。この頃が全盛だったのかも…

フルトヴェングラー・ローマ放送響「神々の黄昏」第三幕(1952年)

1952年のフルトヴェングラーとローマ放送響の「神々の黄昏」第三幕。有名な1953年の指輪全曲録音のきっかけとなった演奏会の記録を聴いた。 途中までは緩い部分も多いが、大詰めのフラグスタートによるブリュンヒルデの自己犠牲はさすが。北欧の鋼鉄の声とい…

ディスクユニオンでのCD処分 プライシングの謎

今後の人生でおそらくはあまり聴き返さないであろうCDを、ディスク・ユニオンで売却。 ディスク・ユニオンは、少なくともクラシック音楽のソフト(CD、アナログレコード等)については、日本国内最大の流動性を有する、セカンダリーマーケットである。 …

クレンペラー エルサレム交響楽団 マーラー第9

「クレンペラー最後のマーラー第九」等、盛んに宣伝されている録音。この手の宣伝につられて買ってがっかりすることも多いが、これは本当に凄かった。 タワーレコードの宣伝等にもあるとおり、オケは技術的には非力さが目につくが、そういうものを超えた、と…

Silvestrov 癒し系の音楽

Silvestrovはウクライナの作曲家らしいが、癒し系。ひたすら綺麗な音楽。 Silvestrov - Best of

ヴァインベルク交響曲・ミルガ・グラジニーテ=ティーラ

ヴァインベルクという作曲家、名前すら聞いたことがなかったが、聴いてみると素晴らしかった。 交響曲第2番は、弦楽器のみの編成で、冒頭は、ワーグナーのちょっと後、19世紀末くらいの調性感。ムード音楽のような感じでやわらかく始まる、純粋に綺麗で親し…

ウィーンフィル、ジョンウイリアムスのアルバム

超久しぶりに渋谷のタワレコ覗いて、面白半分に試聴したら、凄くて買ってしまった。入店した時は思いもよらない結果。 スターウォーズやジュラシックパークのテーマをウィーンフィルがやったら凄いことに。ブラスの輝き、弦の艶、楽友協会ホールの長い残響。…

ワルター・ウィーンフィル 1948-1956 ライブ

日経の日曜版「名作コンシェルジェ」に、1950年代のウィーンフィルとの名盤が登場(モーツァルトの40番とレクイエム、マーラーの復活) 特にモーツァルトの40番は、冒頭の有名なメロディ(ミレレー、ミレレー、ミレレーシー)の最後の「レーシー」の部分で、…

レヴァイン・バイロイト ジークフリート第三幕

先日の続きで、ジークフリートの第三幕を聴いた。 冒頭のヴォータンとジークフリートの出会いの場面は、盛りを超えつつある中年あるいは初老の権力者と力を付けつつある若者の関係、あるいは父と息子の関係という意味で、普遍的なテーマだと思う。 我が国で…

朝比奈・大阪フィル ブルックナー全集(ジャンジャン版)

メルカリで、ジャンジャン版の朝比奈・ブルックナ―全集を入手。2000年頃にグリーンドア社が発売したもの。ディスクユニオンでは4万円以上の値が付いているものが4分の1程度の値段だったので良い買い物だと思う。 早速第四番あたりから聴き始めているが、…

レヴァイン・バイロイト ワルキューレ・ジークフリート

90年代半ばにFM放送で録音したレヴァイン指揮のバイロイトのワルキューレと、ジークフリートを途中まで聴いた。 レヴァインのはテンポがかなり遅く、良く言えば大らか、悪く言えば緩い印象を持っていたが、オーケストラは昔の巨匠のもののように巨大ではな…

アバド・ベルリンフィルのベートーヴェン交響曲第三番(1995年ライブ)

アバドの新旧のベートーヴェン交響曲全集(80年代半ばのウィーンフィルとのものと2000年前後のベルリンフィルとのもの)は、同じ指揮者のものとは思えないほど違いがあるが、いつ頃、演奏スタイルの変化が起きたのかに興味があった。 この1995年のエロイカは…

アルバン・ベルク 歌曲全集

最近Brilliant Classicsから出た、アルバン・ベルクの歌曲全集がよい。 特に、長らくあまり知られていなかった初期の歌曲(Jugendlieder)が初めて全曲録音されたということだが、これが1901~1908年の間で74曲あり、いずれも1~2分の大変短い曲ばかりである…

ウィーン国立歌劇場ストリーミング 神々の黄昏

ウィーン国立歌劇場も無料ストリーミングが開放されていて、コロナ禍で中止となった演目の過去公演記録を流している。 今日は神々の黄昏が見れる。ジークフリートはグールド、ブリュンヒルがテオリン、指揮者はアクセル・コ―バーという人。 さすがに長いので…

ペトレンコ・ベルリンフィル  ベートーヴェン 交響曲第9番

ベルリンフィルのデジタルコンサートホールが無料開放されている機会に、ペトレンコの公演をいくつか見る。 就任演奏会のメイン第九。 一言でいえば速くて引き締まった演奏。ベルリンフィルでいえば、アバドの全集の第九と基本的な骨格は非常に似ていると思…

ペトレンコ・ベルリンフィル  モーツァルト交響曲第35番「ハフナー」

ベルリンフィルのデジタルコンサートホールが無料開放されている機会に、ペトレンコの公演をいくつか見る。 就任前の「悲愴」メインのプログラムの前半でやっていた「ハフナー」が非常にいい。しばらく前に、チェリビダッケが冒頭の主題の「レー(レ)レー、…

マーラー 第五番 名盤 (メンゲルベルク・アムステルダムコンセルトヘボー)

マーラー5番のアダージェット。更に時代を遡って、1926年(昭和2年!)録音のメンゲルベルク=アムステルダム・コンセルトヘボーのSP録音だと、わずか7分5秒。 ポルタメントてんこ盛りで、今こういう風に弾くとすぐに指揮者から「ポルタメントやめてく…

マーラー 第五番 名盤 (ワルター・ウィーンフィル)

1938年(昭和13年)録音のBruno Walterとウィーンフィルのマーラーのアダージェット。 水色に透き通った空のような淡い音色なのは、戦前のウィーンフィル特有のものなのか、古い録音のせいか分からないが、近年では10~11分はかかるのが当たり前のこの楽章を…

2017年バイロイト パルジファル 感想

バイロイト2016年からのパルジファルの演出はモスクがでてきたりと過激だったらしいが、2017年の音だけをNHK-FM放送録音で聴く。各歌手とも好調の上、ヘンヒェンの指揮がこの複雑なスコアを手堅くまとめていて、実はかなり名演ではないかと思う。 もとも…

2016年バイロイト パルジファル 感想

2016年バイロイトのパルジファルはここまでやるかという感想をもたざるをえないものだった。 この演出でのあらすじは、金髪美青年のパルジファルが、第二幕ではUSアーミールックで現れ、クリングゾールの悪の城はイスラム風モザイクのモスク。このプロ…

アメリカの総合誌newyorker magazine はなかなか侮れないとの評価(楽劇ワルキューレ)

トランプ大統領の治世下で揺れる最近の報道ばかり見ていると、アメリカはみんなMAGAと叫ぶばかりの愚民民主主義に墜してしまったように思うが、少し前だが一昨年の秋に底力を感じる記事がnewyorkerにあった。 ワルキューレの第2幕の冒頭の場面は、舞台上ほ…

映画ボヘミアン・ラプソディ―のあらすじへの荒唐無稽な感想(パルジファルと似てない?)

DVDになった「ボヘミアン・ラブソディ」をようやく観た。クィーンの曲はあまり聴いたことはなかったが、メロディアスで和声も美しい歌につぐ歌を楽しむとともに、俗な言い方だが天命を悟った後の主人公の生き方に普通に感動した。あわせて、しばらく前に…

アバドの2つのベートーヴェン交響曲全集をどう評価するか。

最近、日本のアマゾン・プライムで、アバドが80年代後半にウィーンフィルと録音したベートーヴェンの交響曲全集が無料で聴けるようになったが、これが面白い。アマゾン・プライムでは、これまでも、2000年前後にベルリンフィルと入れた全集も無料で聴…

朝比奈隆の名盤 ブラームス交響曲全集

朝比奈隆というとブルックナー、それからベートーヴェンという感じで、同じ曲について新旧何種類も録音が出ていると思う。他方で、ブラームスは間違いなく重要なレパートリーだったはずだが、その録音については意外に印象が薄い。 最近SACDとして出た朝…

上岡敏之のマーラー復活 新日本フィル演奏会(2019年3月31日、横浜みなとみらいホール)の感想

(2019年3月のコンサート感想) 横浜みなとみらいホールでの上岡敏之指揮・新日本フィルのマーラー「復活」に行った。ほぼ満員でホッ。 予想通りというか、一筋縄ではいかない上岡流。とくに第二楽章の超快速テンポや、第三楽章その他での強烈なポルタ…