【バーンスタインのマーラー第九⑤】コンセルトへボウ盤入手の思い出

今回は例のイスラエルフィルの来日公演と同じ1985年録音(発売は1986年)の、アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団との正規盤の日本発売時のパンフレット。

この「新マーラー・サイクル」開始、それも最高傑作の「第九」の発売というのは、遠い極東で高校1年生だった自分にとっても事件だった。一日でも早く聴きたいという気持ちで、国内盤発売を待たずに輸入盤を入手しようと考えた。

当時はクラシック音楽の輸入盤は、タワーレコードもなく、マニアックな個人のお店で細々と扱っているような状況だった。専門誌の広告を頼りに、放課後、新宿、渋谷等のお店を幾つも転々した。途中、同時に発売された第七番は残っていたが、第九はどこも売り切れ。最後に、確か渋谷と代々木の間の山手線沿いのビルにあった「ジュピターレコード」とかいう小さな個人店で1セット余っていたのを掴むように手に取り、買ったと思う。

後知恵だが、プラザ合意の翌年ということもあり、輸入盤の方が国内盤より値段も遥かに安かったと思う。おそらく4000円台だったのではないか。当時の2枚組CDとしては安い。このパンフレットによれば、国内盤CDだと6600円とある。ちなみにアナログLPは5200円と今と違ってCDより安い。

この後、年2~3曲くらいのペースで、各交響曲の録音がリリースされ、いつも、そのしばらく前に、NHK-FMで、CDになる前の生の演奏会録音が放送された。1番、5番、6番のエアチェックのカセットテープが手元に残っているが、何度聴いたか分からない宝物のような記録である。

最近は少なくともクラシックでは、CD発売で、わざわざこんな手の込んだプロモーションはしないと思うし、そもそもほとんどの新譜がspotify等で無料で聴けるので、こうした苦労は何だか笑い話のようにしか聞こえないと思うが、そのせいか、いろいろ聴いても、右から左の耳に流れて忘れてしまう気がする。