【バーンスタインのマーラー第九⑧】イスラエルフィルとのテルアビブ・ライブ

バーンスタインイスラエルフィルによるマーラー第9ライブのCDを聴いた。1985年8月25日テルアビブでのライブ。先般来、私が騒いでいる同じコンビの東京公演の約二週間前。高1の私がカメのように東京を這い回って入手した、アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団との正規録音の3か月後の演奏である。

ちなみに、東京公演の成功について伝えるIsrael Evening Newsの記事がCDの解説に入っている。記事の日付が間違っている(東京公演は9月8日なので8月26日の記事になるはずはない)のはご愛敬。

演奏について触れると、またとまらなくなるのでやめる。骨格は前後の演奏とほぼ同じ。傾向としては、あらゆる点で完成度の高いコンセルセルトへボウの演奏と、一期一会の燃焼感が高い東京公演のちょうど間くらいの感じと思う。

それでも敢えて一言だけ言うと、第二楽章のヴィオラのソロが、何というか、乾いた奇妙な音。普通プロのオケでパートソロを弾く人の音とは違う、ジブシーが弾くバイオリンのような音で不思議な効果をあげる。ベックリンの「バイオリンを弾く死神のいる自画像」を思い出す。東京公演のビデオではあまりそういう印象は受けなかったが、東京公演の貧弱な録音のせいか。

このイスラエルでのライブは、2012年になって、イスラエルのHeliconという会社から突然発売された。今回、アマゾンで中古できわめて安く入手した。クリックしてから僅か一両日。くどいようだがコンセルトへボウ盤を東京のCDショップを這い回って入手した35年前とは大違いである。

それもあるが、イスラエルの聞いたこともない会社のCDが日本に相当数入って来ていて、アマゾンでもメルカリでも中古が並んでいるということに驚く。

イスラエルという国については毀誉褒貶いろいろ評価はあると思うが、自分は数年前から濃い関心を持ち続けている。最近では、コロナワクチンについての驚くべきスピード対応が話題になったが、それだけではない。ここには書かないが、仕事の関係で、この国の素晴らしさについて改めて認識を新たにさせられる話を同僚から聞いた。

私は、ドイツのシュミット元首相の回顧録の「日本は(ドイツと違って)周囲の国と真の友達になれなかった」という言葉で酷く傷ついた世代である。大学時代から韓国語を勉強してみたり、周囲の諸国に関心を持ってきたが、残念ながら、年を経るごとに、益々、シュミットに反論する材料を失いつつあるように思う。

他方、最近、地球儀を眺めると、各地域に、意外に周囲と折り合いがはつかないがキラリと光る国があることに気づき始めた。一つがこのイスラエル。もう一つは英国である。

もちろん、まずは対米関係、次は周辺国だが、他地域のはぐれ者同士、もう少し連携を模索してもよいのかなと。

バーンスタインマーラーのつなぐ縁で、改めてそんなことを思ったりしている。