~ Fallen Angel(堕天使)~

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先日、しきりにFallen Angel(堕天使)という言葉がでてくる会議があった。無味乾燥な用語(と中身)の多い金融関係の会議の中では珍しく「えっ」と耳をそばだてたくなる。その時のテーマは保険会社の資産運用だったが、要は、投資適格から投資不適格に滑り落ちた(堕落した)債券ということらしい。
「堕天使」というと昔に観た「トリスタンとイゾルデ」のプロダクションを思い出す。舞台の中央に、顔を覆って倒れ込んでいる巨大な「堕天使」像があって、場面転換があるとゆっくり回転して向きを変える。この4時間半以上続く、愛と死のドラマが、すべて、この「堕天使」像の上で展開される。
二幕の例の愛の二重唱も、最後のイゾルデの「愛の死」も、この天使の羽の間の背中の上で歌われる。
当時は演出家の子供じみた、くだらない思いつきのように思ったが、二十年近く経った今でも、青白い光が、ブロンズのような冷たい質感の天使の背中の滑らかな曲線に反射していたのを思い出すことを考えると、印象に残ることは確かだろう。
日頃は、物事ができるだけおかしなことにならないよう、円滑に進むことばかりケアする仕事をしていることの反作用なのか、暇な時は、こういう「変」なモノについ興味が湧いてしまう。