東京の美術展(クリムト)

今年は東京でクリムトに関連した大規模な展覧会が二つも開催された。こんなことは、ロンドンやニューヨークでもなかなかないのではないかと思う。

 

正直、ムスクの香りのように臆面もないリビドー剥き出しのクリムトが体質的に合う人が、日本人の間でそんなにたくさんいるも思えないが、なぜか結構人気がある。ともあれ、東京というのはすごい街だと思う。

 

特に東京都美術館では、セセッションのベートーヴェン・フリーズの実物大のレプリカまで展示されたとか。

 

この作品、無暗に有名で、ベートーヴェンのCDのジャケットを飾っていたりするが、クリムトの場合、ベートーヴェンというより、やはり、同時代のマーラーとかR.シュトラウスの音楽の方が似合うと思う。

 

個人的には、ウィーン大学の医学部のための作成した天井画、残念ながらオリジナルは焼失してしまっているが、これを見ると、いつも、マーラーの八番の交響曲の大詰めの部分を思い出す。

 

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有名なバーンスタインウィーンフィルの録音でいうと、1:12:05以降の部分。

 

バーンスタインマーラー八番)

https://www.youtube.com/watch?v=NSYEOLwVfU8

 

とりわけ、1:15:45からの、ウィーンフィルのヴァイオリンがエクスタシーに達したように、感極まって上昇音型を奏でる部分は、女性の躰がフロートして天に昇っていく姿そのもののように感じる。

 

これこそ19世紀末から20世紀初頭にかけてのドイツ語圏芸術の醍醐味。

 

この爛熟した生の歓びにあふれた時代は、残念ながら長くは続かない。絵画はエゴンシーレ、音楽でいうとシェーンベルク以降になると、どこか影と苦みがあって、そこに大きな世代の断絶があると思う。

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