マゼール追悼

マゼールへの追悼の言葉を書き込むページがオープンしています。ご遺族にもわたるようです。マゼールは、私のドイツ滞在当時、バイエル放送の交響楽団音楽監督で、シーズン中は2週間に1回は開かれる定期演奏会をせっせと聴きに行っていました。決して全てが名演という訳ではなく、子供の様に指揮棒を手元でクルクル回して見るからに気乗りしていない感じの日もあれば、フルート独奏とオーケストラのためのなんだか正直あまり冴えない感じの自作を大切そうに演奏している日もありました。また、ワーグナーの指輪を1時間くらいの交響詩に自分で編曲したのもお好きなようでよくやっていましたが、4日かかるオペラのクライマックスを次々とつなぎ合わせた音楽を指揮している姿は、柔道の乱れ取りのようだなと思ったこともあります。かと思えば、突然、神が降臨して、ブルックナーマーラー等で神がかり的な名演奏を聴かせてくれたりしました。マエストロは、ミュンヘンでも、ガスタイクという大ホールではなく、ポリーニがピアノ独奏の録音に使っているヘラクレスザールという石造りの小ぶりの会場がお好きでしたね。神が降りてくるのは大抵ヘラクレスザールでした。その後、ベルリンで仕事をしていたときも、時々、ベルリンフィルに客演で来られていましたが、ミュンヘンの誼でせっせと通ったものです。こうして演奏会の思い出がいろいろと浮かんできて、このページに追悼の言葉を書き込んでいるうちに、不覚にも涙が出そうになりました。私は控室を訪ねたこともなく、あくまで、舞台と客席、演奏家と聴衆との距離での関係でしたが、確かに、音楽を通じたコミュニケーションが成立していたことを、今、実感しています。