【バーンスタインのマーラー第九①】ベルリンフィルのトロンボーンはなぜ落ちた。

ここ1年くらいの間に、バーンスタンのマーラー第九についていろいろと書くことがあったので、順番に投稿したい。

仕事でもオーラルヒストリーの重要性を感じることが多いが、バーンスタインが生涯に一度だけベルリンフィルの指揮台に立った「伝説の公演」をめぐって興味深い証言があった。

昔からカラヤンとの確執の噂をはじめ、エピソードには事欠かない録音だが、音楽面での最大の謎は、長い長い第四楽章のアダージョの大詰め(118小節)で、「最後の審判」のような宿命的なファンファーレを鳴らすはずのトロンボーン・セクションが全員落ちていること。「天下のベルリンフィルが何故?」というのは、この録音の謎の一つだった。

世の中には物好きな人がいるもので、指揮者の徳岡直樹氏がこの日の演奏会についての情報を集め、彼のサイトで発信している。それによれば、当時の演奏会を聴いた人の証言で、音楽がこの部分に差し掛かる前に、舞台のオーケストラの後ろの方に座っていた聴衆が心臓発作を起こし、救急隊員がトロンボーン・セクションの間をかいくぐって救命に行き、そうした混乱のために、この重要なフレーズに入り損ねたのだという。ご存じのとおり、ベルリンのフィルハーモニーは舞台の演奏者の後ろにも聴衆の席がある。

かれこれ40年以上前の演奏会での出来事でもあり真偽は不明だが、純粋に興味深い話。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm37377337?ref=series&playlist=eyJ0eXBlIjoic2VyaWVzIiwiY29udGV4dCI6eyJzZXJpZXNJZCI6MTcyMDk2fX0