カラヤンのアシスタントをしていた高関健さんへのインタビューで例のバーンスタインVSベルリンフィル演奏会について言及があった。
「あの歴史的なバーンスタインとベルリン・フィルとのマーラーの第9番も練習から全部見ました。あの時はすさまじかった。練習が全部できないうちにリハーサルの時間が無くなっちゃった。だからぶっつけ本番の部分もあって大変なことだったんです。2回本番があったけど、1日目だけしか録音していないはずです。だから編集したとかしてないとかいろんな話がありますが、編集などできるはずがありません。オーケストラがずれているところも多くて、トロンボーンが4楽章の有名なところで落っこってますね。でも聴いている方としては本当に素晴らしかった。」
この部分も面白いが、カラヤンのアシスタントをやっていたときのエピソードがなお面白い。
「ご褒美で4日後の木曜日に「コリオラン」序曲をなんと本番で振らしてくれたんですよ」
「練習で代わりに振ってみろって言われてすぐ振らされて、それがなんとかうまくできたので、それ以後はアシスタントとして使ってくれるようになりました」
「こだわりのあるような人ではなかったですね。ただし、これやれ、って言われてすぐその仕事ができないと二度と使ってくれない」
「舞台上には譜面台が置いてないんですよ(注:ご存じのようにカラヤンは暗譜で指揮をする)。どの曲が来ても暗譜で振ってうまくいかないと、カラヤンが怒っちゃう、という状況だったから」。
自分の職場でも、若い頃はいろいろと困難があって、ウルトラ多忙の中、上司が他に呼ばれてしまって、不意に本番を「振らされる」という緊張感は常にあった。高関さんのように「どの曲も暗譜」とまでは行かないが、いろいろと誤魔化しつつも、停まらないくらいにはやれるよう、頭のどこかでシュミレートはしていたと思う。というといかにも格好がいいが、単に、そうしないと死んでしまうから、そうするしかなかったというだけの話ではあるが。
どこの世界も同じ。