ペトレンコ・ベルリンフィル  ベートーヴェン 交響曲第9番

ベルリンフィルのデジタルコンサートホールが無料開放されている機会に、ペトレンコの公演をいくつか見る。 就任演奏会のメイン第九。 一言でいえば速くて引き締まった演奏。ベルリンフィルでいえば、アバドの全集の第九と基本的な骨格は非常に似ていると思…

ペトレンコ・ベルリンフィル  モーツァルト交響曲第35番「ハフナー」

ベルリンフィルのデジタルコンサートホールが無料開放されている機会に、ペトレンコの公演をいくつか見る。 就任前の「悲愴」メインのプログラムの前半でやっていた「ハフナー」が非常にいい。しばらく前に、チェリビダッケが冒頭の主題の「レー(レ)レー、…

マーラー 第五番 名盤 (メンゲルベルク・アムステルダムコンセルトヘボー)

マーラー5番のアダージェット。更に時代を遡って、1926年(昭和2年!)録音のメンゲルベルク=アムステルダム・コンセルトヘボーのSP録音だと、わずか7分5秒。 ポルタメントてんこ盛りで、今こういう風に弾くとすぐに指揮者から「ポルタメントやめてく…

マーラー 第五番 名盤 (ワルター・ウィーンフィル)

1938年(昭和13年)録音のBruno Walterとウィーンフィルのマーラーのアダージェット。 水色に透き通った空のような淡い音色なのは、戦前のウィーンフィル特有のものなのか、古い録音のせいか分からないが、近年では10~11分はかかるのが当たり前のこの楽章を…

2017年バイロイト パルジファル 感想

バイロイト2016年からのパルジファルの演出はモスクがでてきたりと過激だったらしいが、2017年の音だけをNHK-FM放送録音で聴く。各歌手とも好調の上、ヘンヒェンの指揮がこの複雑なスコアを手堅くまとめていて、実はかなり名演ではないかと思う。 もとも…

2016年バイロイト パルジファル 感想

2016年バイロイトのパルジファルはここまでやるかという感想をもたざるをえないものだった。 この演出でのあらすじは、金髪美青年のパルジファルが、第二幕ではUSアーミールックで現れ、クリングゾールの悪の城はイスラム風モザイクのモスク。このプロ…

アメリカの総合誌newyorker magazine はなかなか侮れないとの評価(楽劇ワルキューレ)

トランプ大統領の治世下で揺れる最近の報道ばかり見ていると、アメリカはみんなMAGAと叫ぶばかりの愚民民主主義に墜してしまったように思うが、少し前だが一昨年の秋に底力を感じる記事がnewyorkerにあった。 ワルキューレの第2幕の冒頭の場面は、舞台上ほ…

映画ボヘミアン・ラプソディ―のあらすじへの荒唐無稽な感想(パルジファルと似てない?)

DVDになった「ボヘミアン・ラブソディ」をようやく観た。クィーンの曲はあまり聴いたことはなかったが、メロディアスで和声も美しい歌につぐ歌を楽しむとともに、俗な言い方だが天命を悟った後の主人公の生き方に普通に感動した。あわせて、しばらく前に…

アバドの2つのベートーヴェン交響曲全集をどう評価するか。

最近、日本のアマゾン・プライムで、アバドが80年代後半にウィーンフィルと録音したベートーヴェンの交響曲全集が無料で聴けるようになったが、これが面白い。アマゾン・プライムでは、これまでも、2000年前後にベルリンフィルと入れた全集も無料で聴…

朝比奈隆の名盤 ブラームス交響曲全集

朝比奈隆というとブルックナー、それからベートーヴェンという感じで、同じ曲について新旧何種類も録音が出ていると思う。他方で、ブラームスは間違いなく重要なレパートリーだったはずだが、その録音については意外に印象が薄い。 最近SACDとして出た朝…

上岡敏之のマーラー復活 新日本フィル演奏会(2019年3月31日、横浜みなとみらいホール)の感想

(2019年3月のコンサート感想) 横浜みなとみらいホールでの上岡敏之指揮・新日本フィルのマーラー「復活」に行った。ほぼ満員でホッ。 予想通りというか、一筋縄ではいかない上岡流。とくに第二楽章の超快速テンポや、第三楽章その他での強烈なポルタ…

ブニアティシビリのシューベルト

(2017年11月のコンサート感想) ブニアティシビリと上岡敏之さんと新日本フィルとの演奏会(2017年11月11日)。メインはチャイコフスキーのピアノ協奏曲で、これについては別途書くが、アンコールで弾いたシューベルトのセレナード(ピアノ版)がとても印象…

シューベルト(ハンス・ツェンダー編曲)冬の旅

今日の日経新聞で紹介されていた、ハンス・ツェンダー編曲による室内楽オケ伴奏版の冬の旅。 ドイツの放送局によるYOUTUBEがあったので早速第一曲の「おやすみ」を視聴したが、日経の紹介通り面白い。 お聴きになるが一番だが、分かりやすくいうと、ベルクの…

ヤルヴィ・N響のブルックナー第七番ウィーン公演 現地での評価

欧州由来のクラシック音楽を日本人が欧州人の前で演じるときは、欧州人側には一定の好奇とバイアス、偏見があると思う。歌舞伎を欧米人が演じるようなものと思えば当然ではあるが。 こういうこともあって、日本人が演じ、作曲するクラシック音楽が欧州人にど…

ブニアティシビリ・上岡敏之・新日本フィル チャイコフスキー・ピアノ協奏曲(2017年11月17日)

(2017年11月17日の演奏会備忘) 上岡敏之・新日本フィルとの演奏会。ブニアティシビリはチャイコフスキーのピアノ協奏曲で登場するが、チャイコフスキーを挟んだ前後が、ベックリンの有名な絵画「死の島」をモチーフとした2つの作品。冒頭がラフマニノフの…

芥川龍之介と魔笛

作品としての凄みや深さは、同じ作曲家の「ドン・ジョバンニ」等の方が上かも知れないが、何とも言えない温かさと人間味という意味では、「魔笛」は数あるオペラ作品の中でも随一の存在ではないか。 20代に独身で2年間過ごした外国の街で観た「魔笛」で、パ…

クライバーの運命ライブ(1978年、シカゴ響)

大学時代、先輩からCDを借りて一聴驚愕した懐かしの録音。 クライバーのベートーヴェンのライブといえば、第七番と第四番が、日本の人見記念講堂でのものをはじめ多数残っているが、運命(第五番)はこのシカゴ交響楽団との1978年のものしかないのでは…

クルレンツィスの運命2

クルレンツィスの運命交響曲。先週、トレイラーがないのかと言っていたら、ネット上で、ごく一部だが画像があった。といっても、今度発売予定の録音ではなく、4年前のベルリンの地方テレビの企画の映像。 オケの前で、いかにもベルリンらしい、風変わりなコ…

クルレンツィスの運命

クルレンツィスの運命。基本、シャカシャカ系のベートーヴェンは嫌いだが、彼のはちょっと気になる。 気にはなるが、中身を知らずに買う気にはなれないので、販売サイトでは、できればトレイラーを出して欲しい。

ネルソンスのブルックナー ちょっと聴いてみての感想

今年のニューイヤーコンサートにも出演したネルソンスがゲヴァンドハウスのオーケストラと録音したブルックナーの第9交響曲の入ったセットをレコード店でつまみ聴きした。 ネルソンスは生で聴いたことはないし、ボストン交響楽団とゲヴァンドハウスのオーケ…

バレンボイムのベートーヴェン演奏への評価 2017 年秋のFinancial Times紙での論争

いささか旧聞に属するが、ベートーヴェン・イヤーで、バレンボイムがピアノ・ソナタの演奏会を各地でツアーしていることもあるので。2017年の秋のバレンボイムの75歳記念演奏会への評価をめぐって、英経済紙Financial Timesでちょっとした論争があった。 き…

チェリビダッケのモーツァルト交響曲第35番「ハフナー」

チェリビダッケ・シュトゥットガルト放送交響楽団のブルックナー・アルバムの中におまけのように入っているモーツァルトのハフナーが凄い。 例の第一楽章の冒頭の跳躍するテーマ(レー(レ)レーレ ド、ド)のレーがふわっと風が舞い上がるように始まり、そ…

ペトレンコ ベルリンフィル ベートーヴェン 第七番

ベルリンフィルのデジタルコンサートホールで、今、無料で聴けるペトレンコのベートーヴェン第七番。 このシャリシャリいう、しゃぶしゃぶにポン酢でもかけたような薄味の響きは、アバド 治世の後半以来のhistorically informed performance路線の延長線で、…

ヘルダーリン ヒュペーリオン

ヘルダーリンは、19世紀後半のドイツ語圏の文化や思想に触れていると、山登りをしていて途中現れる沢の流れのように、時々見かける名前である。 日本では近年はあまり関心が寄せられていないのか、主著ヒュペーリオンも、一番手に入りやすいのは初版1936年の…

バレンボイムとベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏 (フランクフルター・アルゲマイネ紙寄稿)

バレンボイムがフランフルターアルゲマイネの文芸欄にベートーヴェンについて投稿していると思ったら、要は、自身が今度やるベートーヴェンのソナタ全曲演奏会のプロモーションのような文章。 それも、冒頭はあえてベートーヴェンではなく、バイロイトで初め…

「神々の黄昏」序章と第一幕  クナッパーツブッシュ・バイロイト(1958年)

大晦日の今日はクナッパーツブッシュの「神々の黄昏」。 いつも感じるのが、クナの指揮するワーグナーの独特の響き。圧倒的に分厚い低音の上にどっしりと構築された音。豊饒だが、カラヤン・ベルリンフィルやオーマンディ・フィラデルフィアのように磨き上げ…

マリア・カラスのクンドリ

先日、マリア・カラスのイゾルデを紹介したが、なんとカラスのクンドリという恐ろしいものが録音で残っているらしい。録音が随分悪いらしいのでただちに購入するのは躊躇われるが、試しにちょっと聴いてみたい。 https://tower.jp/item/4607873/%E3%83%AF%E3…

ティーレマン・ウィーンフィル ベートーヴェン 第5交響曲

もともとモーツァルトやベートーヴェンのピリオド演奏が嫌いで、モダン楽器のオーケストラでも、編成を小さくしてやっている昨今の風潮も気に入らないなか、ティーレマンはウィーンフィルでのベートーヴェンでも大編成でやっているので、一度聴いてみようと…

フェリアー・ワルター マーラー・大地の歌(1948年ライブ)

久しぶりにマーラーの「大地の歌」の終楽章「告別」を聴いた。フェリアーとヴァルターのコンビだが、48年のNYでのライブ。細かく聴き比べたわけではないが、名盤として有名なDECCAとのスタジオ録音と比べて、フェリアーの声がより清冽で、まっすぐ飛んでくる…

マリア・カラス  イゾルデの愛の死

カラスがイゾルデの愛の死を歌っている音源を発見。歌唱はごく常識的な感じだが、イタリア語で歌っているのが珍しい。ただ、あまり違和感を感じないのが意外。イタリア語は実に音楽的な言語で、大抵のメロディーに合ってしまうためか。 https://www.youtube.…